漫画のセリフの考え方 ~言葉選びについて~

   2017/05/31

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 マンガを描く上で必要となってくるのは絵のほかにも様々な事がありますが、今回はその中でも「セリフなどに使われる言葉の選び方」について考えてみたいと思います。

 一言でマンガといっても色々あるので、中にはセリフがほとんど無いような作品も存在はしています。しかし多くの人がマンガと言われて想像するのは、普通にセリフの入ったマンガだと思います。実際マンガを書く場合、多くの人はそういったマンガを描くのではないでしょうか。

 マンガは描かれた絵からだけではなく、セリフや擬音といった文字からも様々な情報を読者へ与えます。大げさに言えば絵を見ずにセリフや擬音などの文字を読むだけでも、その場面やキャラの性格・関係など、様々なものが見えて来ると思います。逆もまたしかりで、マンガという一つの作品の中で、お互いに補い辛い部分を補い合い、より魅力的に魅せるための手段として、それぞれの長所が活用されています。

 文字表現はマンガにおいても便利なので、頼ってしまい勝ちになる人も多いと思います。しかし文字ばかりに頼ってしまうと、伝える事を意識しすぎて説明過多になったり、絵でも十分表現できること・伝わっていることを文章で書いてしまい、野暮な表現になるケースもあるので注意は必要です。

 今回はそんな文字表現の中でも、文章などに使われる言葉(単語)の選び方についてです。

 ちなみに表現する上での絵と文字の違いによる差については、そのうち別のテーマとして触れてみたいと思います。

漫画のセリフの考え方 についての案内
第一回 言葉選びについて
第二回 言葉を知ろう!~


1.セリフ中に使われる言葉の大切さ

 マンガの中で使われるセリフなどの文章一つにおいても、キャラの個性や設定など、様々なものが表されて書かれています。「陽気だけれど知識レベルの低いキャラ」なら、明るい話し方で誰でも分かりやすい簡単な言葉を使ったり、「冷静沈着で知識レベルの高いキャラ」なら、落ち着いた話し方で小難しい言葉を使ったりなど、そうやってそれぞれにキャラ付けがされています。細かい部分まで行くと個々にズレはあるでしょうが、ある程度そういったものには共通認識でのテンプレートが存在しています。

 ただ、いくらテンプレがあるからと言って思いついたセリフを適当にぽいぽい並べ立てるだけではキャラにブレが生じたり、面白さが半減してしまうことも多々あります。キャラクターの個性や状況に合わせて「どんなセリフや言葉が適切か」という事を何度もよく考え、表現することで更に奥行きのあるマンガになっていくのではないでしょうか。

 日本語は類義語も多いですが、私生活の中だと伝わりやすい言葉を選んだり、自分が慣れている言葉を使ったりなど、無意識に近い状態で言葉を選んで話していると思います。しかしながら、マンガや読み物を書くとなると、そういった感覚で言葉を選んでばかりでは雰囲気を損なってしまうこともあります。たった一つのコマに使われているセリフの一つ、はたまたセリフ中に使われている言葉の一つでも、読者の印象を変える力は持っています。また言葉によっては、自分の意図していない意味に捉えられてしまう、なんてことも無いとは言い切れません。

 言葉選びがうまく出来るようになると、作品をより面白く魅力的に見せたり、話や雰囲気を伝えやすくなったり、結果的にセリフをコンパクトにまとめやすくなったりなど、色々とマンガを書いていく上でプラスになる面が多いです。

 そういった意味でもマンガのセリフを考えるとき、一語一句「その文字表現で面白いか」、「表現したい部分がちゃんと伝わるか」、「キャラにブレがないか」などを意識して考えてみると、より一層魅力のあるマンガが描けるようになるのではないでしょうか。

 ただ上でも言っていますが、過度に言葉に重点を置きすぎるあまり説明過多になったり、野暮になる場合もあるので、そこばかりに意識を集中しすぎて他が見えなくならないよう注意は必要です。


2.言葉の選び方について

 話の中で相手に急いでほしい気持ちを伝える場合、「急いで!」「大至急!」はたまた「即行!」など、様々な言葉の候補があります。しかし似たような意味の言葉でも、多かれ少なかれ言葉ごとに受ける印象は違っています。また、使いどころによってはどの言葉が適切か、などもあると思います。

 例えば軍事系の作品を書くとして、階級の高い上官と接するシーンがあるとします。その中で階級の低い軍人が階級の高い上官に対して、指示されたことを急いで実行する趣旨を伝えたい場合、どういったセリフを入れるのが適切でしょうか?

 この時、ただ単純に「急いで~~をします」とセリフを入れてしまうと、流れや意味は通っているものの、軍隊物として上官へ返す言葉としては、なんだか雰囲気的に物足りなく感じる人もいるのではないでしょうか。もちろんキャラ付けなどの問題はありますが、そうでもないなら雰囲気を損なってしまう可能性はあります。

 上の例文の話し方自体は敬語になっています。しかし言葉を選んでいる印象は少なく、どちらかというと規律の緩い場所や、社会経験などの少ない若者が話している様な印象を受けるのではないでしょうか。もちろんそういった雰囲気を出したい時や、我を忘れてとっさに口ばしってしまう演出ならそれもアリかもしれません。しかし従来の軍事物として考えると、なんだか堅苦しさや言葉の重さが損なわれますよね。

 では、どんな言葉を入れるのが適切か?となりますが、「直ちに~~を行います。」と言葉を変えるとどうでしょうか。さっきよりも軍事物らしい印象になったかと思います。「直ちに」のほかにも「迅速に」「早急に」「速やかに」など、その場によって使い分けられる言葉は色々と存在します。

 実生活の中であなた自身も相手や場所によって使う言葉を選んでいると思いますが、それはもちろんマンガの中のキャラクターにも言える事です。話し方は元より、選ばれた言葉一つからも、見た目だけでは伝わりきらないキャラクターの個性や関係性など、様々なものが作られていきます。

 ですので根本的な話し方だけではなく、キャラや場面に合わせた適切な言葉選びが出来るようになれば、それだけそのシーンやキャラに説得力を持たせ、より深く作品の雰囲気や魅力を伝えられるようになります。

 そういった理由からもセリフを考える際、思いついた言葉を単純に当てはめるだけではなく、言葉一つにおいてもキャラクターの性格や状況をよく考え、その言葉で表現するのが最適か、そしてなにより魅力的で面白くなるかを考えて、言葉を選んでみてはどうでしょうか。


3.言葉は伝えるための手段のひとつ

 実際のところ、言ってしまえば作者はその作品の神にも近い存在ですので、世界観やキャラクターのイメージなど、様々な情報がマンガを書く前から分かっていると思います。しかし、読者はそうもいきません。もちろん少し読んだからといって、それだけで全てを理解するなんてことも不可能です。

 あくまでも読者は徐々に作品を読み進め、その中で与えられた絵や文章といった情報から、少しずつ世界感やキャラクターのイメージ、ストーリーなどを脳内に構築していきます。そしてその積み重ねで、面白い・感動した・泣けたなど、様々なマンガに対する感想を持ってくれます。

 そういった物を伝えるための手段としてマンガという物が在り、そのために「絵があり、言葉がある」ということを理解して、マンガを書いてみはどうでしょうか。

 無数に存在するセリフの中にある言葉の一つといえど、それはマンガと言う作品の中で読者に魅力を伝えるために存在する大きな武器の一つです。

 もちろん文系の人や読み物をよくする人は言葉選びも上手いかもしれません。逆にそうでない人は言葉を選ぶのが苦手な人も多いとは思います。実際のところ、私自身も文章を読んで頂いたならバレバレだと思いますが、言葉選びはとても苦手です。それどころか文章を書く&まとめること事態が苦手ですが……。

 ただそうであったとしても、「言葉を選ぶ」ということを少しでも頭において、意識していくことが自身の成長に、果ては面白い漫画を書くためにも大切なのではないでしょうか。


4.最後に

 それでは相変わらず長くなってしまいましたが、今回はこれで終了です。

 次回は、今回書いた内容にも関連しますが、「言葉を知り、引き出しを広げる。」ということについて書いて見たいと思います。

次の記事はコチラ
漫画のセリフの考え方 ~言葉を知ろう!~

 そして関係ないですが、描きたい漫画の展開が3~4ページ分のボリュームがあるときに、無理やり2ページにまとめるのはやはり難しいですね(つд`;)相変わらず今回も失敗点や反省点が多いです。失敗を重ねて成長していくんだとは思いますが、正直公開してるのが恥ずかしくなったりする時も……。(笑)


ext. オマケというかワンポイント的なこと
 

 言葉によって表現できる作品の雰囲気も大切ですが、見せる対象となるユーザーの層も意識しておくと良いかもしれません。

 例えば難しい言葉や表現を使いたい際、雰囲気としてはその方が良い場合でも、過度に難しい言葉だらけになると、ユーザーによっては読めない・意味が分からない、といった事態になることもあります。その結果、なんとなく前後の雰囲気から抽象的に内容を想像され、本来伝えたい内容通りには伝わらない場合もあります。最悪のケースだと読者を混乱させたり、魅力が伝わらない、なんて事態もありえます。

 ピンポイントのユーザーに向けた作品や、高い年齢層を狙った場合、そういった事態になることは少ないとは思います。しかし低年齢層を対象としたり、幅広いユーザーを狙う場合は、その辺も意識してバランスよく調整するか、その言葉に対して解説するシーンを入れるなどの救済処置をした方がいい場合もあります。

 専門知識が特にそうですが、自分は知っていても相手は聞いたことすらない、なんてことは日常生活でも普通によくあります。なによりも話が伝わらないのでは、せっかくのセリフも意味がなくなってしまうので注意が必要です。

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